この記事でわかること
- 2019年の国税庁通達改正で何が変わったか
- 最高解約返戻率に応じた損金算入割合の新ルール
- 全額損金になる限られた条件
- 退職金準備としての法人保険の活用方法
- 「節税」と「課税の繰延」の正確な違い
「法人保険に加入すれば節税できる」という話を耳にしたことがあるかもしれません。しかし2019年7月の国税庁通達改正以降、法人保険の損金算入ルールは大幅に変わりました。現在、保険料を全額損金にできるケースは限られており、多くの場合は「節税」ではなく「課税の繰延」であると正確に理解することが重要です。
2019年改正の背景:何が変わったか
改正前は、返戻率の高い保険商品でも保険料の全額または大半を損金算入できるケースが多く、税金の「先送り」を目的とした加入が横行していました。これを受け、2019年7月に国税庁が新通達を発出し、最高解約返戻率に応じた損金算入割合を定める方式に変更されました(参考:辻・本郷税理士法人)。
新ルール:最高解約返戻率別の損金割合
| 最高解約返戻率 | 当初の損金算入割合の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 50%以下 | 全額損金 | 掛け捨て型に近い商品 |
| 50%超〜70%以下 | 60%損金 | 残り40%は資産計上 |
| 70%超〜85%以下 | 40%損金 | 残り60%は資産計上 |
| 85%超 | 当初10年は保険料の一部のみ損金 | 高返戻率商品は最も不利 |
※上記は原則的な扱いの目安です。保険期間の区分・商品の種類等により異なります。詳細は税理士にご確認ください。
全額損金になる条件
新ルールでも全額損金算入が認められるケースがあります。ただし条件は限定的です。
- 最高解約返戻率が50%以下の保険(純粋な掛け捨て型保障)
- 最高解約返戻率が70%以下かつ被保険者1人あたり年払保険料が30万円以下
- 保険期間が3年未満の定期保険・第三分野保険
退職金準備としての法人保険の活用
改正後も、経営者の退職金準備という目的では法人保険の活用が検討されます。具体的には、在任中に保険料を支払い(一部損金・一部資産計上)、退職時に解約して退職金の原資とする設計です。
役員退職金の適正額(損金算入の上限目安)
最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率
功績倍率は業種・規模によって異なり、一般に代表取締役で3.0前後が目安とされますが、適正額を超える退職金は損金算入が認められないリスクがあります。事前に税理士と「役員退職慰労金規程」を整備しておくことが重要です。
「節税」と「課税の繰延」の正確な違い
誤解:節税になる
保険料を損金算入して税負担を「ゼロ」にできるという考え方。2019年改正後は高返戻率商品での全額損金算入はほぼ不可能です。
正確:課税の繰延
在任中に損金算入した保険料は、退職時に解約返戻金として収益計上されます。税を「今払わず、後で払う」にする効果であり、総税負担は変わらないか、状況によっては増える場合もあります。
ただし、退職時に退職金という損金と相殺できれば税負担を平準化できるため、資金の管理・準備という目的での活用には合理性があります。「節税商品」として購入することと、「退職金準備の手段として検討する」ことは、目的の設定から異なります。
参考・出典
- 辻・本郷税理士法人「令和以降の生命保険の改正について」
- EY Japan「法人が支払う定期保険料等の税務上の取扱い」
- 日本生命 NISSAY Business INSIGHT「経営者保険を活用した退職金準備」
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